弁護士費用・裁判費用は相手に請求できるのか?

裁判費用

日常生活を送っている中で、自身に責任はなくとも法的なトラブルに巻き込まれることは決して少なくありません。

 

例えば隣人との騒音トラブル、子どもがケガをさせてしまった、賃貸の退去時に不当な修繕費を請求された、離婚・男女トラブル、交通事故など、さまざまな問題が発生します。

 

このような法的なトラブルが発生した場合に頼りになるのが弁護士ですが、当然弁護士費用や裁判費用などがかかります。

 

では、実際に係争となった場合に、かかった費用を事件の相手方に請求することは出来るのでしょうか。

 

弁護士費用や裁判費用の負担について解説します。

 

1.弁護士費用はいくらかかる?

 

相談料

法律トラブルに巻き込まれ、弁護士を頼ろうとした場合に、まず発生するのが相談料です。初回相談は無料という法律事務所も多いですが、その多くが時間制限付き。1回の相談では解決しないケースがほとんどで、2回目以降の相談料は一般的には5,000円/30分が相場となっています。

 

着手金

着手金とは、弁護士に手続きを依頼する事が決定した際、最初にかかる手付金のような費用です。

 

分割払いを認めてもらえることもありますが、原則として始めに一括払いする必要があります。着手金の金額は、事件の内容や請求したり請求される金額などによって異なり、最低でも10万円程度、離婚訴訟の場合には30万円程度かかることが多いです。

 

報奨金

報奨金とは、事件が解決した場合にその内容に応じて発生する費用です。例えば、慰謝料請求で100万円の慰謝料を手にした場合、その内の〇〇%といった形で請求されます。

 

着手金が少額であれば報奨金が高額、報奨金が少額であれば着手金が高額、といった形でシーソーの関係になっているところが多く、係争で勝てる見込みがある事案ほど報奨金が高く設定されているケースが多いのが実情です。

 

実費・日当等

弁護士に依頼をした後、弁護士は様々な形で相手方と接触しますが、その際の日当や交通費等の実費は別途請求というところも少なくありません。

 

 

 

2.裁判で弁護士費用を請求できるのか?

 

実際に係争となり弁護士に依頼するとなると最低でも数十万円、時には100万円近くの費用がかかる場合もあります。

 

これらの費用はトラブルを抱える人にとって大きな負担になっているのが実情で、それが故に弁護士に頼むことを躊躇するケースも少なくありません。

 

しかし、自分に非が無いのにやむを得ず裁判となった場合、弁護士費用を相手に負担して欲しいというのは当然の感情ですよね。では実態はどうでしょう?

 

原則として弁護士費用は請求できない

 

裁判で負けた場合に、負けた側の当事者が相手方の弁護士費用を負担する制度の事を「敗者負担制度」と言います。

 

日本では、残念ながらこの敗者負担制度は採用されていません。

 

よって、裁判で勝訴しても、相手方に弁護士費用を請求する事は原則として認められていません。

 

不法行為の一部は弁護士費用の請求が可能

 

敗者負担制度は採用されていない為、費用の全額を請求する事は不可能ですが、係争内容に不法行為があった場合には、損害賠償請求の一部について弁護士費用の請求が認められています。

 

具体的には

 

  • 交通事故の場合
  • 犯罪被害にあった場合
  • 医療ミスで身体的な傷害を負った場合
  • 不貞行為で慰謝料請求する場合

 

などが、不法行為に基づく損害賠償請求にあたり、「確定した請求額の10%」は弁護士費用として追加の請求が認められます。

 

例えば窃盗で被害にあい、損害賠償として300万円が認定された場合、その10%にあたる30万円が弁護士費用として上乗せされ、相手方には330万円の支払い命令が下されます。

 

ポイントは実際にかかった弁護士費用は関係ないという事。裁判の判決が出るまでに弁護士費用の合計がいくらかかっていようが、そこは関係ありません。

 

和解となった場合には弁護士費用請求は出来ない

 

前項の不法行為があって損害賠償請求を行い、結果として和解となった場合には弁護士費用は請求できません。

 

弁護士費用を請求できるのはあくまでも、裁判の結果、判決が出た場合に限られます。

 

 

3.示談の段階で弁護士費用の請求は出来る?

 

結論から言えば、弁護士費用としての請求は出来ないのが原則です。

 

ですが、一般的に示談の際、相手方に求める示談金はある程度高めに請求するのが基本です。

 

例えば、不貞行為の慰謝料として一般的に認められる相場は300万円程度と言われておりますが、500万円を請求し弁護士費用も織り込んだ400万円で決着させるという方法です。

 

当初から300万円の慰謝料と弁護士費用として50万円を請求、といった形で分けて請求する事はありませんし、示談・和解の決着には法的な拘束力が無い為、弁護士費用を個別に請求するケースは実例がほとんどありません。

 

実態として、そのような形となっているので、実際に和解交渉を検討する場合には、これらを弁護士と相談した上で織り込み、交渉へと望みましょう。

 

 

4.弁護士費用以外の「訴訟費用」はどうなる?

 

裁判もしくは調停を行う際、弁護士費用とは別に裁判所に対して支払わなければならないお金があります。

 

裁判所に払う費用としては印紙代、切手代がそれにあたり、これらを「訴訟費用」と言います。納める印紙代は訴訟内容(請求金額)によって変わり、数千円〜数万円程度となります。

 

訴訟費用の負担については、交通事故での過失割合のように、原則として負担割合が1:2、2:8といったように決められ、「訴訟費用額確定処分」という手続きを経れば相手方に請求する事が可能です。

 

ですが、これも和解・示談の段階では個別請求する事はしません。また、実務上は裁判で判決が出たとしても訴訟費用額確定処分の手続きを行う弁護士はほとんどいません。

 

損害賠償請求の場合であれば、前項で解説した通り諸々を織り込んで請求するケースが一般的です。

 

また、その他にも公正証書を作成する際の費用や、交通費等の実費があります。医者にかかっている場合にはその診察代などもあります。

 

裁判で争う事項が原因で傷病が発生している場合、診察・入院・通院などにかかった費用は請求できるケースが多いのですが、その他の実費部分に関しては原則として相手方に請求できません。

 

 

5.まとめ

弁護士費用や訴訟費用を相手方に請求できるか否かは、ケースバイケースという事がお分かり頂けたかと思います。
弁護士費用には着手金・報奨金があり、問題解決の道筋が見えていない時点から高額の費用がかかってしまいます。

 

裁判をして相手に請求したいとなっても、損害賠償請求額とその判決次第では、自己負担は避けられません。また、最初から法廷闘争を望む人などそれほどいないのではないでしょうか。出来る事なら、裁判となる前に速やかかつ納得のいく問題解決へと繋げたいものです。

 

問題発生から、示談・和解へ繋げていく為には正しい知識と対処をする事が欠かせず、その為に弁護士の力は必要です。

 

現在、いつでも弁護士を頼れる態勢を作る為に、弁護士費用を保険金で賄える「弁護士保険」が活用されています。

 

法的トラブルは金銭的な面だけでなく、心身が疲弊していくものです。いつ自分の身に降りかかるか分からない法律トラブルに備える為にも、弁護士保険の事も是非知っておいて欲しいと思います。

 

 

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