コインチェックハッキング事件の法的見解は?仮想通貨の資産保全に弁護士は使える?

コインチェック

(2018年1月28日著)

 

2018年1月26日、ビットコインを始めとして盛り上がりを見せていた仮想通貨市場に強烈な冷や水を浴びせる事件が起きました。

 

仮想通貨取引所「コインチェック」から620億円相当のネムがハッキングにより流出し、その結果同取引所内のネム以外を含むユーザーの全資産が凍結される事態が発生しています。

 

1月27日には、ネムを円換算した形での補償を行う旨、コインチェック社よりプレスリリースがありましたが、先行きは非常に不透明です。

 

では、このような事態に遭遇した際、仮想通貨を取引所に預けているユーザーは資産保全をする為にどうすればいいのか。まとめてみました。

 

1.マウントゴックス社の破綻に学ぶ先例

 

仮想通貨の取引所がハッキングにより突如破綻を起こすといったケースは、過去にも何度か事例があります。その代表的な例が2014年に発覚したマウントゴックス社のビットコイン流出事件で、同社は事件発覚からわずか数週間で民事再生法の手続きを開始しています。

 

この事件に関する詳細な結末は未だ裁判の公判中という事で全てが解決されているわけではありませんが、その中で仮想通貨に関する法的な解釈の先例は出来ていますのでまずはそれを見ていきます。

 

※法的解釈の出典:みずほ中央法律事務所

 

  • ビットコインは財産として扱う
  • 破産した場合、取引所に残されたビットコインは破産財団として扱い管財人が換価(日本円にする)

 

変動が激しい仮想通貨とは言え、しっかり財産扱いとなっています。仮に破産となった場合、コインチェック社が保持している仮想通貨は全て財産として扱われ、その他の有価証券・動産等と合わせて管財人の手によって管理されます。

 

現在、金融庁がコインチェック社に入る事が伝えられており、コインチェック社が金融庁の登録業者として認められていなかった部分ばかりがクローズアップされていますが、そういった側面以外にも今後コインチェック社が資産隠しを行わないよう、ユーザーの財産を守る為でもありますね。

 

では、ユーザーの権利はどうかと言うと

 

  • 現在コインチェック社ではアカウント別に紐づけされたユーザーごとのウォレットの秘密キーをコインチェック社が管理している(マウントゴックス社と同じ)
  • その為、ハッキング被害の過失はコインチェック社にあると判断される
  • ユーザーは凍結されている預け資産の返還請求権がある

 

このようになります。銀行口座を開設したのと同じようにそこにある残高はあくまでもユーザー個人の資産を預かっているだけ。ユーザーの財産として権利が存在しています。

 

 

2.仮想通貨を差し押さえ・返還請求の基本

 

コインチェック返済

 

では、実際に凍結されてしまっている通貨を手元に戻すにはどうすればいいか。勿論、コインチェック社が発表した補償でOKという方ならそれを待っていれば良いわけですが、今後銀行預金の引き出しが殺到する「取り付け騒ぎ」と同様の騒動が起こる事も想定され、確実な資産保全の方法とは言えません。

 

少なくとも弁護士費用を惜しみなく投入してでも返還請求権を行使したいという方は、こういった事態に陥った時は速やかに弁護士を通じてコインチェック社に預金債権の返還請求を通知する必要があります。

 

  • 仮想通貨の預け金(通貨)はユーザーの財産
  • ユーザーには返還請求権がある
  • ユーザーは預け金(通貨)を自由に入出金する権利がある

 

これらを前提にコインチェック社へ対して預金(通貨)の返金請求を行います。

 

それにコインチェック社が応じなければ、コインチェック社の持つ財産を差し押さえる強制執行手続きを取りますが、それにも順序があります。

 

  1. 債務名義の取得
  2. 債務名義の執行文付与の申立て
  3. 債務名義の送達証明申請

 

どれも聴き慣れない言葉ですよね。相手方の財産を差し押さえるというのは、当然慎重に双方の権利関係、第三者の債権の有無などを整理・確定させる必要があり、債権者側が裁判所に対して行わなければならない手続きが多数あります。

 

そもそも強制執行というのは債権者に代わって裁判所が債務者に対して取り立てを行いますので、権利関係に間違いがないか、当然厳重に調べる必要があるのです。

 

また、その他にも取引先の財産調査も必要となってきますので、これらは一般の個人がスムーズにこなせる手続きではありません。

 

また、そもそもコインチェック社が破綻してしまった場合、コインチェック社の残された資産の中から債権者同士での分配となり、手続きのプロセスが全く変わります。

 

 

3.一刻も早く弁護士への相談を

 

以上のように、仮想通貨取引所に預けている財産はユーザーのものですし、それを勝手に凍結させる権利も本来取引所にはありません。

 

しかし、現在進行形のコインチェック社がどうなるか不透明な現状において、一刻も早い債権回収を望むのであれば、速やかに弁護士を通じて手続きを進めましょう。

 

また、日頃からの備えも必要です。保有する通貨はハードウォレットを始めとするオフラインウォレットに入れておくのが基本です。

 

こういったトラブルに備えて、いつでも弁護士に相談できるよう弁護士保険に入っておくのも一つの手でしょう。

 

関連記事:弁護士保険って何??

 

仮想通貨の世界では、こういったハッキング被害は今後も起きるでしょうし、取引所が破産してしまえば預けている財産が戻ってくる可能性は限りなくゼロに近くなります。ましてこれが海外の取引所ともなれば、そもそも強制執行手続き自体が出来ず泣き寝入りするしかありません。

 

皆さんの資産が一刻も早く元通りになる事を願っています。